Avsnitt
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81.2.mp3現場に一人残された村上は震える手で井上の顔面めがけてハンマーを振り下ろした。何度も。彼の身につけている白いシャツにおびただしい量の血液が付着した。その後、塩島の携帯で警察に通報した村上はひとまず山頂を目指した。山頂から麓まで一気に駆け下りることができる場所ががあることを村上は高校時代の鬼ごっこで知っていた。しかしその山頂には間宮と桐本がいた。自分の姿を目撃され万事休すと思った時だ。気がつくと目の前に二人が倒れていた。おそらく自分がやったのだろう。無我夢中だった..
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81.mp3 「どうや。」片倉の問いかけに古田は頭を振った。「ほうか…。」抜け殻のように取調室で佇む佐竹を窓から覗きこみながら、片倉はため息をついた。「あぁトシさん。村上のほうは回復しとるみたいやぞ。」「おう、ほうか。」「意識ははっきりしとるし、じきに取り調べもできるやろ。」「…岡田のタックルがなかったら、今頃全部ぱあやったな。」古田と片倉は取調室を後にした。彼らは北署一階にある喫煙所へと向かった。「どうなったんや。佐竹の立件。」古田の問いかけに片倉は苦い顔をした。そして頭を..
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80.2.1.mp3静寂の中、銃声が鳴り響いた。 目の前が真っ暗になった。撃たれた。俺は村上に撃たれた。撃たれた?痛くない。そうか脳をやられたか。いや、ならばこんなに頭が働かないはずだ。眩しい。なんだこの光は。そうか俺は死ぬのか。寒い。風が寒い。地面も冷たい。地面?なんで地面が冷たいってわかったんだ。手が動く。痛くない。まさか。 佐竹は目を開いた。彼は無意識のうちに目を瞑って地面に倒れこんでいたようだ。彼は即座に身を起こした。すると村上の姿が目に飛び込んできた。彼はその場にう..
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80.1.mp3「俺はその鍋島を殺しただけだ。」「え…。」「確かにお前が言うとおり、俺は人殺なんだろう。しかしお前は事実関係を間違って認識している。」「な、なんで…。」「理由はいろいろある。」村上はポケットに手を突っ込んで地面だけをみていた。「いや…待て…俺はお前の言っていることがわからない…。お前、いま鍋島のような境遇にある人間を救うために政治家になろうとしているとか言ってただろう。」村上は佐竹と目を合わせない。「なに適当なこと言ってんだよ…。」村上は佐竹に背を向け、河北潟..
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79.2.mp3「お前、俺が政治の世界に入った理由、知ってるか。」「そんなもん知らん。」佐竹は村上に向かって歩き始めていた。「お前の講釈なんか聞くつもりはない。俺はてめぇを許さん。」「ははは。佐竹、お前怒ってるな。」「うるせェ。この気狂いめ。」「待て。言っただろ話し合いが重要だって。」「話して何になる。」「お前こそどうするつもりだよ。あん?」村上は自分の車を指さした。「山内がどうなってもいいのか。」佐竹は歩みを止めた。そうだ、自分は山内を救うためにこの場所に来た。警察にはでき..
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79.1.mp3「一色が死んでるよ。」「え…。」「見てみろよ。佐竹。」「な、何を馬鹿なことを…。」「見てみろよ〓︎佐竹〓︎そこを掘ってみろ〓︎」佐竹は村上が指す場所へゆっくりと足を進めた。うっそうと茂る枯れ草を手と足を使って掻き分けて歩く。15歩ほど進んだところで、枯れ草がなくなっている箇所に出た。彼はライトアップされる内灘大橋からのわずかな灯りを頼りに、その地面を注視した。地面は周囲のものとは色が異なり、最近掘り起こされ再び土が被せられた様子が明らかに認められる。「ま、まさ..
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78.mp3河北潟放水路に架けられた内灘大橋は、この辺りに飛来する白鳥と雪吊りをイメージした斜張橋である。この橋は夜になると色とりどりのライトで照らされる。漆黒の闇に鮮やかな光で浮き上がる内灘大橋の姿は美しく、これを目当てに訪れる者は多い。彼は村上が言っていた大橋の袂に位置する駐車場に車を止めた。ここから見る大橋は美しかった。目の前に見える95mもの主塔の姿は雄々しくもあり、光によって照らされているため何処か幻想的でもあった。佐竹はエンジンをかけたまま車から降りた。そしてあた..
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77.2.mp3「警備部課長補佐。」「はっ。」該当する若手の職員が立ち上がった。「今この時点からお前が警備部課長代理だ。キンパイだ。速やかに警備部の精鋭を内灘大橋に派遣せよ。くれぐれも対象に気づかれるな。念のため狙撃班も連れて行け。警備部長には話を通してある。」「はっ。」朝倉の指示を受けた彼はその場から駆け足で去って行った。朝倉が出す凄みと突然の警備課長の更迭が捜査本部内を空気を引き締めていた。それに加えて狙撃班の出動を朝倉が命じたことで場の雰囲気は張り詰めたものとなっていた..
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77.1.mp3「ご苦労さん。捜査本部長の朝倉だ。」北署では19時より熨子山連続殺人事件に関係する捜査員が集結し、朝倉を長とした体制での会議が開かれていた。朝倉は議事進行役の北署署長深沢から新たな捜査本部長としての挨拶を賜りたいということで、マイクを手にしていた。「堅苦しい挨拶は抜きだ。本題から行く。」つい1時間前までは松永が捜査本部長だった。しかし突然彼はそれを降ろされ、朝倉が指揮を取ることとなった。松永が引き連れてきた察庁組は全員撤収。松永だけがいまだに捜査本部に籍をおく..
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76.2.mp3ここで無線が入った。十河からである。「こちら十河。女の正体が判明しました。」片倉と同じ無線を聞いていた古田は、無線の音が松永にも聞こえるようにイヤホンジャックからイヤホンを外した。「理事官。聞いておいてください。」古田の言葉に松永は頷いて十河の声に耳を傾けた。「あの女はアサフスのバイトで山内美紀というらしいです。あの店は月曜定休なんですが、山内は仕事熱心で休みの日にもときどき細々とした仕事を片付けに来ることがあるそうです。」「その山内と村上はどういう関係や。」..
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76.1.mp3「松永…。」片倉と古田は苦い表情をして彼を見た。「ほら採れたてのほやほやだ。」松永は1枚の紙ペラを二人に見せた。「何だこれは。」「Nシステムで補足した19日からの村上の行動経路だ。」「何?」「そこでお前たちに知らせたいことがある。」そう言って松永はここで立ち話をするのは控えたいとして、二人を県警の別室へ招いた。松永の存在に不信と疑念を抱いていた二人であるが、今は一刻を争う。そんなことは言ってられない。彼らは松永の求めに応じた。別室の扉を閉じて松永は手にしていた..
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75.mp3すれ違う者皆がこちらを見る。一体何事かといった表情で見るものもあれば、律儀に敬礼をして道を譲る者もいる。彼はエレベーターの降りるボタンを忙しなく押してそれが来るのを待った。しかし5秒後には踵を返して階段へと足を進めていた。彼は階段を降りるというより落ちるように凄まじい勢いでそれを駆け降りた。そこに携帯電話の音がなった。彼はそのまま階段を降りながらそれに出た。「おうトシさん。」「お前どこや。」「階段。」「はぁ?お前ふざけんなや。」「って言うかトシさんやべぇわ。」「ど..
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74.mp3駅前支店の前にあるホテルの喫茶店に陣取ってかれこれ二時間が経過する。古田がここから観察したところ、佐竹らしい男は一時間ほど前に駅前支店に帰ってきていた。それ以降、彼は店から出ていない。古田はこれで何杯目かわからない珈琲を口につけて手元のメモ帳をパラパラとめくり出した。さすがに珈琲が胃を痛めつけている。古田は自分の腹をさすった。「古田課長補佐。」古田は声のする方を向いた。そこには背広を着た四十代の男が立っていた。「お前が岡田か?」「はい。」岡田はこう言ってそのまま古..
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73.mp3 この時期にもなると、17時を回った頃に日はとっぷりと暮れる。それに追い打ちをかけるように、北陸特有の低く垂れ込める雲たちが月明かりをみごとに遮り、辺りは人工的な灯りがないと闇であった。片倉は古田と別れた後、一路アサフスに向かい、店の前にあるコンビニエンスストアに陣取ってその様子を伺っていた。月曜のアサフスは休みだ。そのため店のシャッターは閉められている。来客らしい人の行き交いはなかった。片倉は携帯電話を見た。古田からの連絡はまだ無かった。彼は目を瞑って事件の情報..
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72.mp3「失礼します。」ドアをノックしそれを開くと、そこには革張りの椅子に身を委ね、何かの雑誌を読んでいる加賀の姿があった。「ああ山県支店長。お疲れさまでした。」労いの言葉をかけた加賀は常務室の中央に配される応接ソファに座るよう、山県に言った。「マルホン建設とドットメディカルの提携話をまとめてくれて助かりました。」山県はソファに座り、何やら照れ臭そうな表情をして軽く頭を下げた。「何を仰います。常務がドットメディカルに働きかけなかったら、こんな芸当はできませんよ。私のような..
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71.1.mp3「俺がですか?」捜査本部の隅で携帯電話を手で覆うようにひそひそ声で話す岡田の姿があった。「…わかりました。で、俺はどこに行けばいいんですか。」岡田は部屋の壁に向かってボソボソと話し、電話を切った。「誰だ?」背後から声が聞こえた。岡田が振り返るとそこには松永がいた。「り、理事官。」「こそこそやってんじゃねぇよ。」そう言って松永は岡田の腕を掴んだ。「おい。お前らこいつみたいにこそこそやってたらただじゃ済まさんぞ。」松永は岡田の腕を決めて彼に膝を付かせた。「お仕置き..
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70.mp3「村上は外出中です。」「何処に?」「わかりません。しばらく戻らないと言って出て行きました。」「分かりました。失礼しました。」古田と片倉は急ぎ足で事務所を後にし、素早く車に乗り込んだ。エンジンをかけた片倉は切り出した。「やっぱりあいつ。なんか知っとるぞ。」「行き先も告げんと外出。俺らが来るのをどっかで察知したな。」片倉はヘッドレストに自分の頭を預けた。「なぁトシさん。マルホン建設と仁熊会、警察上層部って言う構造的なものよりも、この村上っていう男の存在が一色の捜査に二..
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69.mp3「いいか。絶対に何とかしろよ。おめぇだけじゃねぇんだ。長官にも先生にも迷惑がかかる。」こう言ったそばから運転席の窓をノックする音が聞こえたため、村上は電話を切って窓の外に目を向けた。そこには見覚えのある笑顔があった。村上はドアを開けて男と向かい合って立った。「久しぶりだな。赤松。」「やっぱり村上か。」「おう村上だ。」「お前何しとらん、こんなところで。」「いや…ちょっとな…。」「こんなところやと何やし、うちにでも寄ってけ。」「いや、ここでいい。」「何言っとらん?水く..
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68.2.mp3【公式サイト】http://yamitofuna.org【Twitter】https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVMご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。すべてのご意見に目を通させていただきます。場合によってはお便り回を設けてそれにお答えさせていただきます。
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68.1.mp3佐竹は当てもなくただ社用車を走らせていた。「どこで知り合ったんか分からんが、俺に紹介したいって連れてきたんや。」「は、はぁ。」「何でも警察キャリアの大層おできになる男みたいでな。なんか鋭い目つきで眼鏡かけとっていかにもって感じで、俺は正直好かんかったんや。でも、久美子がやたらあいつの事を庇うっていうか、持ち上げるっていうか、何しゃべるにしてもあいつの事を会話の中に入れてくるんやて。ほんで、こりゃあ相当惚れてしまっとるなと思ったんや。」「そうですか…。」「カミさ..
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